Rail or Fly

レールに乗るのか、飛び降りるのか、迷っているきみに届けたい。

感想

僕の好きな映画ベスト10(2013~2014年に観たもの)

広告代理店という「映像コンテンツ」を一つの売り物にしている会社に入るということもあり、去年の今頃から意識して映画を観ることにした。 元々僕は「小説」や「音楽」といった「直接目には見えない表現」が好きで、「映画」というのは、まあ映画館で年に2…

雲のむこう、約束の場所 / 新海誠作品の映像美は、思い出の美しさである。

「雲のむこう、約束の場所」を観た。 この作品は、いわゆる「セカイ系」に分類される。主人公たちの身の周りの小さな人間関係の綻びが、世界の破滅とか終焉とかに直接つながっているような作品、Wikipediaの同名の項の言葉を借りれば、“主人公たちの行為や危…

「広告ビジネス 次の10年」広告に携わるすべての人が読むべき一冊。

先月発売されていた「広告ビジネス 次の10年」(著者:横山隆治、榮枝洋文)を読んだ。 著者の一人、横山隆治氏は、広告業界の人間にとっては「業界人間ベム」でもおなじみの方だろう。 広告代理店のぺーぺーとしてこの本の感想を一言で言うと、半端ない危機…

'何者' / 朝井リョウ - 誰かを肩書きや見かけで判断してあざ笑っても、何者にもなれやしないんだ。

あなたは、「何者」かになりたいと思っている人たちを、バカにしたことはないだろうか? SNSのプロフィールに尊敬する起業家や冒険家といった人たちの名前をスラッシュを交えて並べ立て、「クリエイティブ」やら「ノマド」やら中身のない横文字を大量に含ん…

The Velvet Underground & Nico - The Velvet Underground / Andy Warhol が遺した、ロックという新しい芸術のかたち。

1960年代の中ごろ、ニューヨークで新しい芸術の試みがなされようとしていた。 中心となった人物は Andy Warhol。50年代に広告業界のデザイナーとしてキャリアをスタートさせた Warhol は、50年代末からアーティストに転身し、「シルバー・ファクトリー」と名…

Please Mr.Lostman - the pillows / いつか忘れ去られる運命であっても歌い続ける。1人でも、聴いてくれる人がいる限り。

ブログで何かを発信するという行為は、そう楽なものではない。 特に僕にとっては、ブログは無味乾燥な情報を掲載する場所ではなく、自分のメッセージを書きつける場所であるから、なおさらだ。 一生懸命書いても、誰にも届かないのではないか…。届いたとして…

IT'S A WONDERFUL WORLD - Mr.Children / 聴くと少しだけ救われる、短編映画の傑作集のようなアルバム。

桜井和寿の病気による2回目の活動休止の直前に出された、Mr.Childrenの10thアルバム。「秩序のない現代にドロップキック」「わずかにあるマネーで誰かの猿真似」と、醜い現代社会を痛烈に批判していた彼らが、その醜さすらも美しいと捉えてしまおうと歌う、…

The Bends - Radiohead / 「普通の人」になりたいという願望に苦しむ、すべての「変わり者」への応援歌。

ロックでやれることは、もうあらかたやり尽くされてしまった…。そんな世紀末感の漂う1990年代に彗星のように現れた、Radioheadの2ndアルバム。1stアルバムで見せたトリプルギターのアンサンブルの、ひとつの完成形を提示する名作である。 the bendsは「潜水…

名前をつけてやる - スピッツ / 情けない青春が詰まった、幻想的な絵本みたいな音楽。

スピッツ。日本人ならたいていの人が、このバンドの名前くらいは知っているだろう。彼らの代表曲の1つ"空も飛べるはず"は、しばしば学校の合唱用の曲として取り上げられるほど、世の人々に浸透している。しかし、スピッツというバンドは、「音楽の教科書に載…

Q - Mr.Children / メジャーど真ん中にいるバンドが繰り出した、渾身の実験作。

ミスチル、と言えば、みなさんはどんな曲をイメージするだろうか。1990年代に青春を過ごした人なら、"innocent world"や"Tomorrow Never Knows"と言った懐かしい名曲たちを、今20歳前後の人なら、"Sign"や"しるし"を、それぞれイメージする、ということにな…

The Stone Roses - The Stone Roses / 水のような、極上の透明感。

最初にこのアルバムを聴いた時、あまりにもすっと聴けて「あれ?もう終わったのか」と拍子抜けしてしまった。それほどまでに、このThe Stone Rosesのセルフタイトルアルバムは、聴き手に違和感を与えずスムーズに流れてゆく。かといって印象に残らないかとい…

FUTURAMA - SUPERCAR / 退屈な日常にも名曲は流れてるよって、教えてくれる名盤。

西暦2000年。この世界とは違うどこかの並行世界のお話。1961年に始まったアポロ計画は順調に進行し、とうとう37号が宇宙に向かって旅立った。星の落ちてくるような夜、SHIBUYAの街は風に乗るサーフボードが行き交う。しかし、それが特別な光景というわけでは…

White Light/White Heat - The Velvet Underground / きみは、この白い熱を感じるか。ロック史に残る傑作。

クールに、しかし心たぎらせて。白熱、という日本語の直訳がぴったりな、The Velvet Undergroundの2ndアルバム。例えば宇宙に浮かぶ星の温度を知りたい時、その星の色を手がかりにすればよい、という話は、聞いたことがあるかもしれない。赤よりも黄よりも、…

'デミアン' - ヘルマン・ヘッセ / 「自分の進む道に確信を持っている人」なんていない。

今「デミアン」という小説を読んでいるが、そこにこんな一節が出てくる。ほかの人たちのすることは、私にもなんでもできた。わずかの勉強と努力でプラトンを読むことも、三角の問題を解くことも、化学の分析にくっついて行くこともできた。ただ一つのことだ…

サワヤカ☆ギターロック、DRIVEとALRIGHT/スーパーカー

アコギのキュッキュッというグリッサンドが印象的なDRIVE。軽快なシャキシャキしたギターストロークとは裏腹に、コードはけっこう気持ち悪い。バンドスコアではナカコーがこんなことを言っている。「スーパーカーで初めて作った曲。いろいろなスタジオで、こ…

'青が散る' - 宮本輝 / 喪ったものは可能性である。喪失と教養小説について。

青が散る〈上〉 (文春文庫)作者: 宮本輝出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2007/05メディア: 文庫購入: 9人 クリック: 18回この商品を含むブログ (26件) を見る青が散る〈下〉 (文春文庫)作者: 宮本輝出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2007/05メディア: 文…

'K家' (バー@京都)

オシャレな石の通路の奥に、扉がある。モダンで、それでいてどこか和風なテイストを感じながら、引き戸を開く。新しいお店の扉を開く時はいつも、緊張と不安が入り混じる。快く迎えてもらえるだろうか、何か粗相をしでかさないだろうか…。数年ぶりに入るお店…

風立ちぬ / やりたいことを信じてやり続けることの難しさ。

※以下、ネタバレ注意です。 一月ほど前に「風立ちぬ」を観て、今さら感想を書こうと思う。僕は普段あまり映画を観ない。もっと言うと、映像系のエンターテイメント(ドラマやアニメなどを含む)をあまり鑑賞しない。それは、物語のゆくえや登場人物が映像を…

スピッツの魚について

スピッツといえば、「空も飛べるはず」「ロビンソン」「チェリー」などで有名なポップバンド、というイメージが強い。「空も飛べるはず」は音楽の教科書に載っていたり、学校の合唱曲として使われたりしているし、ここからもスピッツは「毒のない、悪く言え…

本の感想2/「利己的な遺伝子」他

小さなチーム、大きな仕事〔完全版〕: 37シグナルズ成功の法則作者: ジェイソン・フリード,デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン,黒沢 健二,松永 肇一,美谷 広海,祐佳 ヤング出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2012/01/11メディア: 単行本購入: 21人 クリ…

本の感想1/「ライ麦畑でつかまえて」他

ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス)作者: J.D.サリンジャー,野崎孝出版社/メーカー: 白水社発売日: 1984/05/20メディア: 新書購入: 48人 クリック: 410回この商品を含むブログ (356件) を見る この本は18の時から何度も読み返している。僕はもう23になる…

ノスタルジーと透明感、スーパーカーというバンド

最近仕事があまりにも…な感じなので、夜は若干音楽に逃避している。今日は、僕のとても好きなバンドの一つ、スーパーカーを紹介しようと思う。 高校の終わり頃から邦楽ロックにハマった僕は、「ロキノン系」(ロッキンオンジャパンという音楽雑誌に載るよう…

はぐれた時の隙間ならきっとすぐ埋まるよ?ミスチル編

辛いことがあった日には、音楽を聴いて日本を思い出す。初めてその曲を聴いた時のことが鮮やかに思い出されて、僕はしばし思い出に浸る。音楽は心のタイムマシンとは、よく言ったものだ。 僕の音楽のルーツは、父親がよく聴いていたMr.Children。今でもバリ…