4月1日から、新卒研修を受けている。
この間、研修の最中に、同期一人ひとりのプレゼンを聴く機会があった。
プレゼンのお題は以下のようなものだ。
「自分が所属しているネット上のコミュニティがあると仮定して、そのオフ会を、幹事の立場で企画せよ」
この「ネット上のコミュニティ」はどのようなものを想定してもよい、ということだったので、みんなそれぞれ自分の好きなことを楽しめるコミュニティを設定し、思い思いのオフ会企画をぶちあげていた。
サッカーであったり、クラシックバレエであったり、ラーメン二郎であったり、音楽であったり。
どの企画も本当に楽しそうだった。今まさに日本のどこかでそのオフ会が開かれているかもしれない、そんなワクワクを聴き手に抱かせるプレゼンだった。
僕はそれを聴きながら、ああ、これが広告代理店なんだ、僕はこんなところに来てしまったんだ、と思った。
僕には、「これが自分だ」と言えるようなものは、一つもない。
小説や音楽はとても好きだけど、僕より深く広く読んだり聴いたりしている人は、ごまんといるだろう。
野球もギターもダイビングも、僕にしかできないレベルまでやりこんだものは何一つない。
僕は、ちょっと学校の勉強ができただけの、中途半端な人間。
「これが自分だ」と言えるような何かを持っていないこと、もう少しカタイ言葉で言えば、自分のアイデンティティを何かに託せないことこそが、学生時代を通じての僕のコンプレックスだった。
同期のみんなのプレゼンを聴きながら、僕は大学に入学した時のことを思い出していた。
あの時もまた、僕は周りの友達に比べて自分がいかにちっぽけで何者でもない人間であるかを痛感していた。
ただ一つ違う点は、あの頃はみんなと同じように自分のアイデンティティを託せる何かを見つけようと躍起になっていたけれども、今はそうではないということだ。
「あなたはどんな人間ですか?」と聞かれても、自分の代名詞はこれだ!なんて全然言い切れない、中途半端な人間。
それこそが、僕だ。
学生時代に散々回り道をして、そう心から言えるようになったことこそが、僕にとっては本当に大きな一歩だったなぁ、と思う。
たとえそれが、人から見れば笑ってしまうようなつまらない一歩だとしても。
同期のみんなのプレゼンは素晴らしかった。彼らと一緒に働けて、本当に嬉しく思う。
こうしたワクワクやキラキラから学べるものをとことん学びつつ、僕は僕のままで、泥臭くやっていきたい。
改めて、そんなことを思った研修の一シーンでした。