これまで多くの人と2人でお酒を飲んできた。
そんな中で、今日は良いさし飲みができたな、と思える瞬間が、時たまある。
相手に気を遣うことなど忘れて、ただただ話が弾んで、あっという間に時間が過ぎる。
実は、そういった飲みの中で話した内容というのは、あまり覚えていないものだ。
その代わり、ひたすら楽しかった、またあの人と話したい、そういった気持ちが心の中に強く残る。
ああ、今のは良いコミュニケーションだったな、と思う時、その内容やメッセージはほとんど頭に残らない。
さし飲みに限らず、面接やプレゼン、誰かの文章を読んだ時など、すべてそうだ。
僕も時々「あの飲みの時すっごく楽しかったけど、何を話したのか覚えてないよ」と言われることがある。内容を覚えていないことについて謝ってくれる人もいるんだけど、僕はむしろ「覚えていない」というのを褒め言葉だと受け取っている。
内容が頭に残らない代わりに、ただただ楽しかったという感情が、心に残る。
僕たちは日々膨大な量のコミュニケーションに接している。
一昔前には考えられなかったほど多くの人とコミュニケーションしている。
多くのことを覚え、忘れるという行為を繰り返している。
そんな中で、何が語られたのかすら覚えていないけれども、ただ居心地が良かったということだけを覚えているようなコミュニケーションは、いっそう大切になってくるのではないだろうか。
炭酸のような刺激もなく、口に残る強烈な後味もなく、喉に引っかかる感じもなく、ただすっと飲める。印象に残らないのに、また飲みたくなる。そして決して飽きない。
良いコミュニケーションって、そんな水みたいなものなんじゃないかな。