Rail or Fly

レールに乗るのか、飛び降りるのか、迷っているきみに届けたい。

2人で飲む時に、ちょっと深くておもしろい話を聴く方法

僕はこれまでいろいろな人と「さし飲み」をしてきた。途中で人数を数えるのをやめたんだけど、たぶん今100人くらいだと思う。

大学時代をめいっぱい使って100人だから、もちろん僕より多くの人と飲んでる人もいると思う。

ただ、自分なりに「人と話すのはおもしろい」と思ってやっていた。

じゃあ、何がそんなにおもしろいのか。あるいはどうしたらそんなおもしろい飲みになるのか。今日はそこらへんについて書いてみようと思う。



まず、「おもしろい」という言葉の意味だ。

僕はもともと非常にマジメな人間で、バカ騒ぎをするということがあんまり好きではない。やろうと思えば大人数で盛り上がることもできなくはないけど、三度の飯よりそういう宴会が好きかというと、それは違う。

(そういうふうに騒げる人を羨ましいなぁと思うことがけっこうあるけど、それは今日の議題ではないので、省略します。)

反対に、少人数になればなるほど、一人ひとりとじっくり話すことができるから、飲み会は少ない人数でやるのが好きだ。それの究極の形が、さし飲みである。

そうやって一対一で話をしている時、僕がおもしろいと感じる瞬間は2つある。

1つは、自分とまったく違う価値観や考え方を知った時。人はいろいろな考えのもとに行動している。表面的には同じようなことをしていても、全然違う価値観のもとに行動しているということがよくある。

もう1つは、自分と同じように世界を見ている人がいると知った時。1つ目とは逆に、表面的には違う人種なのかなと思っていても、根底のところが一緒だったりする。これもまた、よくある。

つまりさし飲みというのは僕にとって、「へぇーそんなこと考えたことなかったよ」という発見の驚きと、「そうそう、俺もそう思っていたんだよ」という共感の喜びとを味わえる、心のジェットコースターのようなアトラクションなのである。



具体的に考えよう。

上で述べている「ジェットコースター」を味わえるのは、たとえばこんな時である。

・「サークルでの時間の使い方」というテーマを同じサークルの先輩と話した時。僕はサークルでだらだらと時間を使うのがあまり好きではなく、そのことを話してみたところ、「サークルで時間を使うということは、その場での人間関係に投資しているということ。サークルで気心知れた人と居心地良く過ごすことに価値を見出さないのなら、別にそこに時間を使う必要はないんじゃない?いろんなことができるのは、時間をたっぷり持ってる大学生の特権だと思う」という話を聴けて、とても共感した。

・おもしろいことを言い、話が合い、頭も回る友人がいる。「将来はバリバリ働きたいなぁ」という点では自分と一致しており、さぞかしやりたいことがたくさんあって悩んでいるんだろうなと思い就職についての話を聴くと、「やりたいことは実際、全然ない。ただ自分の能力が正当に評価される場所で、競争して勝ち抜いていきたい」という答え。僕はどちらかというとナンバーワンよりも少しニッチなところでおもしろいことがしたいなぁと考えているので、違うんだなぁと思った。

・将来ギターを弾いてのんびり暮らしたいなぁ、と言う友人と話した時。「自分の代わりがいるのが嫌だ」という理由で、昔は勉強に打ち込んでいた友人だが、今は趣味のギターができれば良いと言う。どんなことに打ち込むかは問題ではなく、「これをやっていれば自分は幸せだ」と思える何かがあれば人生は楽しいのではないか、という点で、友人の意見には共感した。

ちなみに、これらの例はすべて、昔僕が運営していたウェブサイトで記事として掲載していたものだ。(実は近々新しいサイトを立ち上げる予定…立ち上げたらこのブログでも宣伝します。)

見たらわかるように、「人の深いところにある考え、その人の生き方や価値観に関する考え」に関する話が多い。

それは、表面的な会話だけでは、先ほどあげた「発見」と「共感」の楽しさを味わうことができないからだ。

もちろん、サークルやクラスで誰と誰が付き合ってるという噂話とか、誰かが何かバカなことをやらかした話とか、芸能やニュースをネタとした話をすることもある。しかし、そんなことをずっと一対一で話し続けているのは、なんというか不毛だ。楽しくないことはないけれど、二人で飲む意味がない。そういったテーマは、みんなで騒ぐ時にやれば良いと僕は思う。



それでは、そんな「人の深いところにある考え方」は、どうやったら聞き出せるものなのだろうか?

一つには、自分の「話の聴き方」、聴く姿勢についてのコツがあるように思う。もう一つには、人の深いところにある考え方を掘り出しやすいテーマがあると思う。



まずは前者から。

話の聴き方とあるが、これについてはまあ簡単である。人間関係についての指南書とかでよく言われるように、相手が話している間はそれをさえぎらない、相づちを打つ、目を見て話す、やたら相手の話を否定しない、身を乗り出して聴く、などなど。

ただ、こういったポイントをいかにも義務的にやってはまったく意味がない。一つひとつの行為を、自分がしたいと思ってしなければならない。それには、相手に興味を持つことである。

そういったポイントの中でも僕が重要だと思うのは、「自分の言葉で相手の言ったことを確認する」ということである。

基本的に、自分の考えていることは自分が一番よくわかっている。しかし、それを他人に伝えようとしても、なかなか伝わらないことが多い。逆に言えば、他人が自分に対して言ったことをきちんと理解しているかというと、答えはノーであろう。

しかし、さし飲みの場では、「相手の話を理解した上で、自分の考えとの相違あるいは共通点を見つけ、おもしろいなぁと感じる」ことを目的としているわけで(少なくとも僕にはね)、相手の考えていることと自分の読み取ったことを、きちんとすり合わせていく必要があるのだ。

僕の経験上、普段自分との接点が少ない人と飲む時ほど、「こいつ何言ってんだ?」と感じる瞬間は増える。それは、お互いの世界を知らないからである。言葉で説明しなくてもわかるような共通のバックグラウンドが少ないのである。

だがそこで「あーわかるわかる」と適当にわかったふりをするのではなく、「それって俺の経験からするとこういうことだと思うんだけど、どうかな合ってる?」と切り込み、すり合わせていく。それが見当外れであってもかまわない。相手は「あっ、こいつ俺の言ったことわかってないんだな。別の言い方で説明してみよう」と努力してくれるから。あるいは仮に自分の切り込みが正しければ、「こいつは俺の言ったことをわかってくれているんだな」という安心感を相手に与え、もっと踏み込んだことを話してくれるようになる。どちらにしても、悪いことにはならない。

相手に「違うよ」と言われることを恐れないこと。自分も「違うよ」と言うことを恐れないこと。「違う」と言うことは二人で飲む場面においては失礼なことではなく、むしろ真摯な姿勢を示した結果だと僕は思う。



次。人を動かしている深いところの価値観の掘り出し方について。

僕は、いろんな人と飲む中で、「人の心の深いところにある考え」が聞きやすい話のテーマをいくつか見つけた。それを僕は3Cと呼んでいる。

マーケティングの用語にも3Cという超有名な言葉があるけれど、それとはまた違う。この場合、3つのCは"Concept, Curiosity, Change"である。



まずConcept。これは、「その人が大切にしている言葉や考え方」だ。なんていうか、そのままである。

好きな言葉とか、座右の銘みたいなものが聞ければ、だいたいその人がどんなことを大切にしているのかがわかる。

昔、東京の大学生と話をしていた時。彼が「俗物」という言葉を繰り返し使っていたので、僕が「俗物っていうのは、君が大切にしている言葉なの?」と質問してみたところ、「俗物」というのは彼が自分自身について発見したキャッチフレーズであり、一流大学から大手証券会社に入るという「ありがちなコース」を歩む自分を揶揄しつつも、
「でも、オレはこの道を行くんだ!!」という強い決意を代弁するキーワードであることを、話してくれたことがあった。

Conceptに基づいた話題は、相手の話を注意深く聴くことにより見つかる。相手が同じことを言っていないか、同じ意味の言葉を何度も使っていないか、よく話を聴いてみると良いと思う。



次に、Curiosity。好奇心という意味の単語だ。これは、「その人が興味を持っているもの・こと」である。

好きな音楽や本、スポーツ、その他なんでも趣味や特技について聞いてみた時に、「俺はこっちの方が好きやな」「趣味が合わへんな〜」で終わるのではなく、「その本のどこが好きなのか」「その趣味を今後どんなふうにやっていきたいのか」ということを聞いてみるといいだろう。

僕の場合だと、ダイビングサークルの友人と話した時に、「そういえばたくさんツアー(サークル全体で行く合宿ではなく、少人数の希望者だけでいく旅行のようなもの)を計画して行ってるけど、どんなところが楽しいの?」と聞いたことがある。そうすると、「もちろんツアーでみんなと潜ったり魚見たりするのも楽しいんだけど、自分の場合、計画して遂行するということが好きなんだよ。人の面倒を見たがるっていうか」という答えが返ってきて、おもしろかった。

反対に、嫌いなものは何か、という話題にも、人の価値観は表れやすい。ただ、嫌いなものの話はどうしてもネガティブになりがちなので(やたらめったら何かを否定している話というのは、あまり聞いていて気持ちの良いものではない)、話すタイミングを考えることが大事かもしれない。(「何が嫌いかより、何が好きかで自分を語れよ」とはよく言いますね。)



最後に、Change。これは、「今まで生きてきて、自分の考えが変わった瞬間」についての話である。

とある後輩の女の子と話をしていた時のこと。彼女はもともと(ルックスが)派手な女の子は苦手だったと言うのを聞いて、「だったっていうことは、苦手なタイプの子も悪い子じゃないっていうのは思うようになったってこと?」と聞いてみたところ、大学の実習やバイトでの経験を通じて、きちんと話をしないうちに人を判断してはいけないなと思うようになったことを話してくれたことがあった。

Changeに基づいた話題は、昔のことを話している時に見つかりやすい。

あるいはこのバリエーションで、「どんなに環境が変わっても変わらない一面」についての話もまた、その人の深いところの考え方を明らかにしてくれる。Changeの逆、とでも呼ぶべきテーマだろう。

僕自身であれば、「インドにいっても、自分はインドア派であった」(参考:「インドア派が海外に行って思ったこと」)というようなことをこのブログで書いたけれども、「変わらない一面」というのは、そういうことだ。



こういった「話を聴く姿勢」や3Cのテーマといったものをなんとなく頭に入れておくと、けっこう人はしゃべってくれる。

一般的に、人は話すのが好きだと思う。さし飲み対談をやっていると必然的に録音をすることになる。それを聞き直してウェブサイトにアップしていくわけだが、僕の体感では、自分が話をしているのは各データのうち平均して全体の3〜4割くらいの時間で、あとは相手が話しているということが多い。(もちろん、僕の方が多く話していることもある)

あんまり普段話さない人と深い話ができた時のおもしろさは半端ないし、それは意外と身の周りに転がっているものでもある。そして話をした後、「聴いてくれて楽しかった」「いろいろすっきりした」と言われ感謝されることもある。僕としても、楽しい時間をありがとう、といった感じである。

怖そうな先輩も無口そうな知り合いも、話してみたらとてもおもしろくて良い人だった、というのはよくあることだ。

もちろん、僕がいつもいつもさし飲みの時にこういったことばかりを考えて話を聴いているわけではない。

自分が聴きたいなぁと思うことを掘り下げていくと、いつもなぜか上であげたような話題に行きあたるのだ。じゃあこういうことをテーマに話をすればみんな深い話ができるんじゃないかな?と思って、この記事を書いた。

基本的に、僕はさし飲みの相手を選ぶことはない。もちろんこちらから誘うのは、タイミング等々の兼ね合いがあるけれども、受ける方は誰でもウェルカムだ。もしこのブログを読んで僕と飲みたいと言ってくれる方がいれば、何かしらコンタクトを取っていただければ嬉しい。

さし飲みのおもしろさを、もっといろんな人が知ってくれたらいいなと思う。