Rail or Fly

レールに乗るのか、飛び降りるのか、迷っているきみに届けたい。

僕がインターンとアルバイトから学んだこと

今日は、インターンやアルバイトといった学生時代の就労体験を通して僕が仕事というものについて考えたことを書きます。

種類は決して多くはないですが、僕はこれまでいくつかの職場で働いてきました。

アルバイトでは、地元の塾で塾講師として1年間、某居酒屋チェーンのホールとして2年間、沖縄の離島のダイビングショップで2週間働いた経験があります。

インターンでは、小さなIT企業で8カ月間、就職活動の一環として2つのベンチャー企業で数日間の就労体験があり、そして現在進行形でインド資本の企業で1年弱のインターンをしています。

これらの経験を通して考えたことを書こうというわけです。



まず、アルバイトは聞いたことがあってもインターンという言葉になじみのない方に、インターンとは何なのかを説明したいと思います。

インターンというのは、学生などが一定期間企業の中で働く制度のことを指します。

日本において、インターンは大雑把ながら二種類に分けられると思います。

一つは大学3年もしくは修士1年の人を対象にした、就職活動の本選考が始まる数か月前に行われる「就活の一環としての」インターン。これは、インターンに参加する学生をESや面接などで本選考さながらに企業側が選考するものです。

企業側は「本選考とは関係ありません」とうたっているものの、選考に参加している学生たちは、紛れもなくこれを「就活の一環」としてとらえています。

もう一つは、特にベンチャーや中小企業においてゲリラ的に行われるインターンで、こちらは「実戦型インターン」とか「長期インターン」とか名前が付いていることが多いです。

こちらは「就活の一環」というよりも「自分を成長させたい」「自分を変えたい」などという理由で参加する人が多いようですね。

(なお、この「成長」という言葉を単純に使うのは、僕にはとっても違和感があるのですが・・・これについてはまたいつか別の記事で書きたいと思います)



ここから、僕個人にとっての「インターンやアルバイトをやってきた意味」を述べていこうかなと思います。それは大きく三つです。

「自分がやっている行動がどういうふうにお金に結びついているのかを体感することができた」というのが一つ。

「万が一の時のために、自分が働いてお金を稼げる環境を作ることができた」ということが一つ。

「好きなことを仕事にしてお金を稼ぐのはとてつもなく難しいことだと身にしみてわかった」ということが、もう一つです。



まず一つ目について。

先ほどインターンについて「学生などが一定期間企業の中で働く制度のこと」と説明しましたが、インターンをやってどういう意味があったのか、と経験者に聞くと、「仕事とは何なのかを知ることができた」という答えが返ってきます。

ただこれではまだまだ抽象的で、おそらくやったことのない人には「それってどういうこと」と聞き返されることでしょう。

僕が実際にインターンというものを経験した上で改めて考えると、「仕事とは何なのかを知る」というのは「自分がやっている行動がどういうふうにお金に結びついているのかを体感する」というふうに言い換えることができると思います。

たとえば現在僕がやっている海外インターンは、インドに来られる日系企業の駐在員の方に、よりよい暮らしを提供するというものです。

僕の働いている企業は、お客さまのご住居探しのお手伝いであるとか、レンタカーのレンタルであるとか、ビザ延長の手続きとかをビジネスとしています。

その中でも僕の役割というのは、日本人であり日本語のネイティブスピーカーであるという強み(日本人であれば普通のことですが、「英語」ができればその普通のことが強みに変わるのです)を生かして、お客さまの需要を細かいところまで引き出し、インド人上司や同僚に伝えるということです。

ですから、お客さまと電話でやり取りしていて「サカグチくん、そういえば今度家族がこっちに来るから、レンタカーの手配をお願いしたいんだけど」と言われた時や、快適なお住まいをご提供できて「この家はいいね。ありがとう」と言われた時に、「今僕はまさに自分の働いている企業がどうやってお金を生み出しているかを目の当たりにしているんだな」と思います。



さて、このようにインターンを経験して意味があったことの一つとして「仕事とは何なのかを知る」というものが存在するわけですが、これは何も「インターン」と名のつくものに限らないと僕は思います。

アルバイト経験でも、「仕事とは何なのかを知る」ことはできます。ありふれたアルバイトである居酒屋のホールとか塾講師でもそうです。

なぜなら、自分がやっている行動がどういうふうにお金に結びついているのかを体感すること、そして、自分の仕事の内容のうちどの部分を工夫すればよりたくさんのお金を生み出せるのかを考えることは、アルバイトでもできることだからです。

たとえば僕は居酒屋のホールスタッフを2年間やっていたのですが、その中でも飲み放題のコースをお客さまにおススメするという役割を任されていました。

飲み放題コースをされたお客さまの一人当たりの客単価は、普通に飲食される場合よりも高くなるということが知られています。つまり、飲み放題のコースをたくさん取ることは、ホールスタッフの仕事の内容のうちたくさんのお金を生み出すことに直結する部分なわけですね。

居酒屋が最も忙しくなる12月、僕のバイトしていた店の2010年の売上は前年を下回ったものの、客単価は前年を5%程度上回りました。ちなみに、土日には一日の売り上げが100万をゆうに超えるお店です。

店長からは「お前の飲み放題コースのおススメのしかたは素晴らしいから、働いているメンバー全員に講義してくれ」と言われてなぜか講義をやらされましたし、また講義レジュメを作ったところ他店の店長がそれを気に入って自店に持って帰ってくれたりだとか、他にもチェーンの本部から表彰もいただくということもありました。

どんな仕事でも、どこからお金が生み出されているのかを考えて、そこにひと手間かける。その仕事がインターンと呼ばれていようがアルバイトと呼ばれていようが関係ありません。そうやって仕事について考えることで、先ほど述べた「仕事とは何なのかを知る」ことができます。



余談ですが、僕は「(親が)高いお金を払って買った大学の講義の時間を、大学生たちはアルバイトという単純労働で安く売り飛ばしている」という言説が好きではありません。

確かに、お金と時間の交換という観点からのみ考えれば、高い授業料を支払って買った時間を、もう一度安く売り払っていると言えるかもしれませんね。

でも、アルバイトというチャンスで何を学べるかは、その人次第なのです。

大学では営業のやり方を経験として学ぶことはできないでしょう。ところが、最もありふれていて時給も安い居酒屋のバイトですら、僕のように営業のやり方を学ぶことができるのです。

単純に「アルバイトは時間とお金の交換」と考えるのは思考が停止しているということです。

もちろん、アルバイトをやっている時間においては、大学という場所で学べることを学べないわけですが。どちらを選ぶか、というところですね。



二つ目です。

「人生は思い通りにいかない。万が一の時のために、自分が働いてお金を稼げる環境を作る」というのは、「命綱を作る」と言い換えることができるかもしれません。

今年は例年の10月ではなく、12月から本格的な就職活動が始まるというのがニュースにもなりました。

就職が年々厳しくなっているとよく言われますが、2011年10月1日時点での2012年卒の内定率は59.9%、また2011年4月1日時点での2011年卒の内定率は91.0%です。(参考:社会実情データ図録

大学生の方には「就職が厳しいらしい・・・どうしよう」と思っている方もおられるかもしれませんが、2011年卒の内定率を見ればわかるように、最終的には大学卒業までに9割以上の人が内定をもらっているのです。

つまり、働く場所を選ばなければ、就職する場所はあるということです。

これは僕の実感としても感じていることです。

たとえば、僕は社員数5人くらいの小さな企業でインターンをしていたのですが、そういった企業で正社員になるには、履歴書を送り、面接を受け・・・といった通常の「採用」プロセスの他に、まずはアルバイト(インターン)として働き、そののちに正社員に昇格する、というプロセスが存在します。アルバイトやインターンから正社員になるケースは通常の採用プロセスを踏むケースよりも多いくらいです。

居酒屋ホールのアルバイトをやっていく中でいざとなればここで働くことができるなと思いましたし、ダイビングライセンスを持っていてある程度の経験があれば、ダイビングショップで雇われるというルートがあることも知りました。

また先ほども述べたように、英語さえできれば(できると言ってもそんなに高いレベルは要求されません)日本人という強みを生かして海外で就職するという選択肢もあります。

「就職が厳しいらしい・・・」とうろたえてばかりいてはダメなのです。二つの問いを立てる必要があります。

一つは「本当に厳しいのか?」という問い。

そして「どうやったらこの世の中でうまく生き延びることができるのか?」という問い。

どちらの問いも、部屋にこもって就活に関する本を読んでいるだけでは答えられません。外に出て、人と話して、自分の目で見て考えなければならないのです。

この二つの問いに同時に答えられるようになるために、インターンやアルバイトというのはとてもよい経験だと思います。



さて、最後です。ここからが本記事のメイン部分です。

僕は昔から「自分の好きなことを仕事にしたい」と強く思ってきました。

大学に入ると同時に、主にサークルの先輩方などから「好きなことを仕事にするのは不可能だよ」という醒めた言葉を聞くようになりました。

「そうなんですかねぇ」などとあいづちを打ちながらも、僕はいつも「そんなことは絶対にないはずだ」と心のどこかで反発していました。

しかし今、自分の経験を踏まえた上で改めて思うのは、「好きなことを仕事にするのはやはりとてつもなく難しいことだ」ということです。

ただその「難しさ」は、「好きなことを仕事にできるほど、世の中は甘くないさ」という醒めた言葉が指す「甘くなさ」とは少し違うな、と思っています。

「好きなことを仕事にするのは無理だよ」という言葉って、「好きなこと」が前提としてあってそれを世の中に「どう伝えるか」の部分が難しいのだ、と一般的には捉えられているように思います。

たとえば僕が小説家になりたいという気持ちを持っていて、それでも「僕の小説なんて、世間から認められるわけがない。好きなことを仕事にすることなんてできないんだ」と言う場合、僕は「小説を書きたい」という気持ちを持っているのが前提になっています。

でも、そもそもその「〜がやりたい」っていう気持ちは、本当に心の底から感じていることなのでしょうか?



好きなことを仕事にするのが難しい本当の理由は、「仕事にする(=それでお金を稼ぐ)部分が難しいから」ではなく、「本当に好きなことを見つける部分が難しいから」だと僕は考えています。

「好きなことを仕事にするのって難しいよね」ということをさらっと言う人のうちの何割の人が、「いったい自分は何が好きなんだろう。何をやりたいんだろう」とひたむきに自問してきた経験をもっているでしょうか。

頭で考えているだけでは、なかなか「自分の好きなこと」ってわからないのです。



たとえばダイビングショップで働くというのは、文字通り「好きなことを仕事にしている」好例と言えるでしょう。

たった二週間でしたが、僕はダイビングショップのスタッフとして働かせてもらったことがあり、今ではあの過酷さを経験できてよかったなと思っています。

朝は6時頃目を覚まし、お客さまのダイビングの予定に間に合うように掃除、ボンベの空気充填、装備などを整え、11人乗りとかの車を安全にスムーズに運転し、船の上ではスタッフさんに怒鳴られながらお客さまのお世話をし、帰ってきたらくたくたになりつつも最後の力を振り絞って翌日の打ち合わせを1時間くらいかけて行い、死んだように眠る生活でした。水中を漂っている時が睡眠以外の唯一の休憩時間でした。

そして、大学に入った頃は「ダイビングのインストラクターの仕事もありだなぁ」と思っていた自分の背中をどやしつけられたような気がしました。

よっぽど好きじゃなければ、この仕事はできないなと思いました。



ネットショップ立ち上げのインターンをしていて、ショップで売り出す新商品を同期のインターン生と考えていた時のことです。

社長が僕らに言ったのは、「自分が本当に好きでなければ、商品というのは売れないものなんだよ」ということでした。

僕らは結局ネットショップの立ち上げを完成させることができなかったのですが、その失敗の原因は、この社長の言葉に集約されていると思います。

僕らは自分たちが売る商品を心底好きだと思えなかったのです。

なんだそんな精神論はビジネスには要らない、と思う方もいるかもしれませんが、この精神論はあらゆる場面でとても重要になってきます。

たとえば新商品を片手に飛び込み営業をするとしましょう。自分の商品に自信がないなら、どうやって商品をお客さまにアピールすることができるのでしょうか。

商品を載せたチラシを作るとしましょう。自分の商品に自信がないなら、どうやって優れたキャッチコピーを思いつけるのでしょうか。

もちろん、優れた商品をいかに世の中にうまく見せていくか、伝えていくかということを考えることは大事です。

だけど何よりも、自分が好きでなければその商品で成功することはできないのです。

僕が去年大学の学祭で「足湯たこ焼き屋」を出して大コケしたのも同じことが原因です。

本当は「ドクターフィッシュ」がやりたかった。だけど運営側ともめてドクターフィッシュは実現できなかった。水槽は作っていたから、しかたなく足湯をやったのです。

たこ焼きで十分元は取れましたが、足湯で稼いだ金額は4日間でわずか200円。

提供する商品やサービスに自信がなければ、売ることはできないのです。



これは自分の仕事を選ぶ時も同じです。

自分が心から好きだと思える仕事、やっていて自分の中で違和感を感じない仕事に従事できて初めて、どうやってその仕事から大きな利益を上げられるかを考えられるのだと思います。

起業という言葉一つとってみても、「起業してえなぁ」と言う人はたくさんいるけれど、結局実行に移す人が一握りなのは、ここに理由があります。

多くの人にとって「起業」という言葉はファッションです。なんとなくかっこいい、できたらおもしろい、そういうイメージでしょう。

僕も昔、「サイエンスのおもしろさを伝えられるような企業を設立したい」と思っていました。

けれども今になって思うと「理学とビジネスってあんまり見ない組み合わせだし、おもしろいやん!」という頭で考えたアイデアばかりが先にあって、「それを本当にやりたいのか」という点についてはずっと違和感を感じていたのです。

もちろん起業したいと思ってベンチャー企業でインターンをしたからこそ、今こんなふうに「起業っていうのは本当に好きなことがないとできないものだ」と考えられる自分がいるわけですが。

だから、企業するために必要なのは、秀逸なビジネスモデルが構築できる頭の良さであるとか、自分のやりたいことの手助けをしてくれる人脈であるとかではなく、何よりも「今からやろうとしていることを好きだと思える気持ち」だと思うのですね。すべてはその後です。

結局「好きなことを仕事にするのが難しい」のは、「本当に好きなことを見つけるのがとても難しいから」だということです。



じゃあ、どうするのか?

諦める、というのも一つの方法です。安定した(と言われている)道を選び、自分ではなく家族や収入というものを優先順位の上位に設定して生きるということはできます。もっとも、これから安定した生き方というのがはたして日本に存在するかというと疑問ですが・・・。

でも、おそらく僕のように思考錯誤しながら「自分のやりたいこと」に少しずつ近づいてきた人であれば、具体的にやりたいことが「これだ!」とは言えなくても、「こっちの方向に進んでいけばたぶん間違ってない」ということはわかっているはずです。

そして、思考錯誤する過程でたくさんの「命綱」を手に入れてきたはずです。

ならば、好きなことは何なのかを問い続ければいいと思います。失敗しても、命綱があります。

僕はこれからも、自分のやりたいことは何なのかを問い続けていきたいと思います。



以上のように、インターンやアルバイトという就労体験の個人的な意味は三つあり、それは

自分がやっている行動がどういうふうにお金に結びついているのかを体感することができたこと、

万が一の時のために、自分が働いてお金を稼げる環境を作ることができたこと、

好きなことを仕事にしてお金を稼ぐのはとてつもなく難しいことではあるけれども、命綱があればそれを追求していくことができることを書きました。

ごく個人的な見解を書いたつもりですが、読んでくれた方を何らかの形で後押しできる記事であれば幸いです。



※2年ちょっと後に書いたこちらの記事も、よかったらどうぞ。

「インターンの方が成長できる」という洗脳から、きみはそろそろ目覚めた方がいい。