小さなチーム、大きな仕事〔完全版〕: 37シグナルズ成功の法則
- 作者: ジェイソン・フリード,デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン,黒沢 健二,松永 肇一,美谷 広海,祐佳 ヤング
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2012/01/11
- メディア: 単行本
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去年とあるウェブサイトを仲間と一緒に作っていた時に読みたかった本。
いろいろ書いてあるけど、一言で言えば「大事なことだけとっととやりましょう」ってことだと思う。
学生であっても、新しく団体を立ち上げたり、学園祭で出店をしたりする時に、非常に参考になる本ではないだろうか。
内容はあまり論理立てて書いてあるわけではなく(内容が論理的でないという意味ではない)、大事な点をテンポ良く並べていく感じだ。その中でも本当に心に残ったものをいくつか書く。
・芯から始める。
・ミッション・ステートメント・インポッシブル(現実から遠く離れたミッション・ステートメントを作るな)
・中途半端な一つの製品ではなく、よくできた半分の製品
・会議は害悪。
・顧客の声を書き留めてはいけない。
この本を読んでいると、前のサイトと今のサイト「つづく。」の違いを痛感する。
前のウェブサイトでは、とにかくコンテンツを増やし、更新頻度を上げ、ミッション(世の中をどう変えたいのか)を確定させ、よく話し合い、どんなものが読者に求められているのか考えた。
具体的には、メインコンテンツが5個、サブコンテンツが2〜3個あり、毎日何らかの形で更新をしていた。ミッションは「役に立たないもののおもしろさを、役に立つものばかり求める世界に広めよう!」というもの。週に一度は誰かとスカイプし、月一でメンバー7人全員でスカイプ会議をしていた。僕はその頃インドにおり、粗悪な回線により会議がたびたび中断されたのには参った。
それに対して、今僕は「つづく。」にはインタビューしか載せないと決めている。たとえ毎週更新できなくとも、僕がおもしろいと思えるものでないとアップロードしないと決めている。世界をこう変えたいというミッションは、持たないと決めた。誰かがおもしろいなと思ってくれたり、インタビューした人の考えに共感してくれたりして、明日からもがんばろうと思ってくれたらいい。僕の個人的なウェブサイトだから、無理やり誰かと一緒にやる必要もない。ましてやビジネスではないのだから、読者の望むコンテンツを提供しようとも思わない(サイトのアクセシビリティやデザインに関するアドバイスは喜んで聞きます)。
人が何かをやりたいと思った時に、それは「アート」と「ビジネス」に分類できるのではないかと僕は思っている。これについてはまた今度書こうと思っているのだけど、アートというのは「自分が良いと思うモノ・コトの価値を世の中に問うこと」であり、ビジネスというのは「世の中で求められているモノ・コトを提供すること」である。
基本的に、画家は自分の描きたいモノを描き、小説家は自分の書きたいコトを書く。(村上隆さんとか秋元康さんとかはその点すごいと思う。)一方ドラッカーが「顧客から始めよ」と言っているように、ビジネスというのは何が求められているかを考えるところからスタートする。
(アート的かつビジネス的なものとして、誰もはっきりした形で望んでいなかったのに、その出現によって需要が創出されるものがある。iPhoneとかまさにそうじゃないだろうか。「マネジメント」にも「需要は今まだ感じられていないこともある」という記述がみられる。その僕の分け方でいくと、この本はどちらかというと「アート的な」やり方を大切にしているように思う)
自分がどちらをやりたいのかをはっきりさせる必要がある。僕の場合、(アートとか言うと大そうだけど)自分のおもしろいと思うものを世に出したくてウェブサイトをやるわけだ。だから、読者の方々の意見を必要以上に聴く必要はないのだ。
少し脱線してしまったけれど、小さなチームで大きな成果を出すために何が必要かを考えるために、とても良い本だと思う。
- 作者: リチャード・ドーキンス,日高敏隆,岸由二,羽田節子,垂水雄二
- 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
- 発売日: 2006/05/01
- メディア: 単行本
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「我々は遺伝子の乗り物である」という考え方を知っている人はどれくらいいるのだろう?生物学に関心のある人なら知っていると思う。
ただ、いわゆる「利己的な遺伝子」論は、マクロ生物学の中では相当重要とされる概念だと思うのだけど、おそらくミクロ生物学における代表的な命題「遺伝子の正体はDNAである」ほどには、まだまだ知られていないように感じる。
しかし、この本を読むと、ものの見方に対するコペルニクス的転回が得られる。幼い頃、地球が太陽の周りを回っているのだと知った時のように。
人は自分以外の人に対して、その人が自分と同じ遺伝子を持っている可能性が高ければ高いほど、その人をよく助けるように見える。これは、自分の遺伝子のコピーが残される可能性が高まるためである。親は子を助け、親類同士は絆で結ばれている。その行動は利他的に見えるけれども、実はある遺伝子のセットにとってみれば、利己的な行動(コピーを増やそうとする行動)なのである。これが「利己的な遺伝子」という考え方だ。
この本は分厚いが、順を追って読めば理解できるような内容になっている。自然淘汰や性淘汰についても、イメージしやすい比喩をふんだんに用いて解説しているので、生物学を知らない人でも理解できる内容だ。
この本は「遺伝子決定論」を述べているわけでもないし、「遺伝子が意志を持っている」ということも言っていない。そういった点を踏まえて、生物というカラクリ(生存機械、とこの本では書かれている)の行動原理を理解する一つの方法だと思って読むと、大変おもしろく読めるのではないだろうか。