アコギのキュッキュッというグリッサンドが印象的なDRIVE。軽快なシャキシャキしたギターストロークとは裏腹に、コードはけっこう気持ち悪い。
バンドスコアではナカコーがこんなことを言っている。
「スーパーカーで初めて作った曲。いろいろなスタジオで、この曲をとった思い出がある。その中でもアルバムに収録されているのは、もっともデモに近い状態でとられた。気持ち良くガシャガシャ、ギターをひいて歌ってみて下さい」
このDRIVEという曲、スーパーカーには珍しく、ややメッセージ性が強い。
”何をしてるの? 何をみてるの? 不安な目をしたまま
どこへいったの? どうして泣くの? 夢はかなえるものよ”
いったい誰が誰に歌っているのだろうか?
一見、女の子が夢見がちだけど弱気な彼氏を叱咤激励しているように思える。
だけど、
”夢で見たドライヴみたいに今日は
お姫様気取ってむじゃきなままで”
と言ってるから、少なくとも声をかけられている方は女の子だ。
また、
”ねえ、こんな日は一緒に空をながめていよう
ねえ、そんな目じゃぁきっと涙しか見えないよ”
もし恋人同士なら、一緒に空なんか見上げてないでお互いを見つめ合ったりするんじゃないだろうか。
だからきっと、この2人は恋人同士ではない。
(ちなみに僕は見つめ合うのはほどほどにして一緒に空をながめていられる人がいいなぁと思う。僕の好みなんてどうでもいいんだけど。)
そして、LUCKYみたいなナカコーとフルカワミキのツインボーカル曲で一人称が「僕」「あたし」と使い分けられているように、基本的には、ボーカルと歌詞中の語り手の性は一致する。
つまり、フルカワミキがボーカルを務めるDRIVEは女の子が女の子に向けて歌った歌であると推測される(詩を書いてるのはまぎれもなく男のジュンジだけどそれは置いといて…)。
それにしても”悩んでなんかないわよね”とか”忘れたわけじゃないのよね”とか、挙句の果てには”ちょっぴりあなたが弱いだけでしょ?”とか、もし友達に向けて言っているのだとしたら、ちょっと子ども扱いしすぎな言い草だ。むしろ、母親が娘に、姉が妹に言い聞かせているような、そんな感じだ。
ちなみに僕は、これは女の子が自分に言い聞かせている歌だと思った。そう考えると、いろいろしっくりくる。
大人になっていろいろしんどいことも経験してくじけそうになった時に、自分の中のもう1人の自分が「まだやれる!」って励ましてくれる。口調は突き放してるけど、その実ツンデレというか、あたたかいものを感じるのだ。
DRIVEとALRIGHTはキーが同じなのでとても自然に入っていける(ALRIGHTの方が少しだけ低い気がするが、だからこそ落ち着いて聴けるかもしれない)。
こちらも爽快さマックスの曲で、DRIVEと比べるとギターリフが目立つ。
”かけひきだとかため息だとか言葉の奥の言葉は知らないよ”
お得意の、何か深いことを言っていそうで何も考えていないような、でも発音の心地良さだけは絶対に考えているようなジュンジの言葉が、この曲では全編にわたって散りばめられている。
サビのタメがものすごく長くてダサいんだけど、それが絶妙な感じに青臭さを出してる。
”言い訳なんかじゃない これが19で覚えたジョークなんだ”
”あきらめなんかじゃない これが19で覚えたジョークなんだ”
ここで言う「これ」というのは、歌詞の中には出てこない。
たぶん…言葉にするとしたら、
「昨日徹夜で遊んで講義をサボってしもたわwもう単位取れへんかもww」
「先輩のギターめっちゃ上手い…。俺はセンスないしあんな風には弾けへんなw」
こんな感じだろうか。大学1回生の僕がこんなことを呟いている姿が目に浮かぶ。
言い訳やあきらめを口にしているようで、実は自分はその程度屁でもない、楽勝でこなしてみせるといったような根拠のない自信に満たされていた、そんな時代。
それをジョークとうそぶくのは、自分を守りたいからで。
その頃私は二十歳で、思想が強大な力を持っていることを信じていた。
そして自分が存在していると同時に存在していないのを感じることで奇妙な工合に苦しん でいた。
ときに私には何でもできるように思われ、その自信は何らかの問題に当面するや否や失われて、
実際の場合における私のかかる無能さは私を絶望に陥らせるのだった。
(Paul Valery)
曲を締めくくるチョーキングの音は、主人公が、DRIVEで歌われていたような「どこへ行けばいいの?」という疑問に、さしあたりの答えを見つけたことを思わせる。
本当はHALKROADについても動画を紹介したかったけど(この3曲が4thシングル「DRIVE」の全楽曲になる)、Youtubeに動画がなかったのでやめておく。3曲続けて聴いてこそのシングル「DRIVE」なので、興味のある人はぜひバラバラにアルバムを集めてでもいいので3曲揃えて聴いてほしい。HALKROADのキーも違和感ないように設定してあるし。
YoutubeやiTunesによって曲を1曲ずつ聴くということが当たり前になったが、シングルやアルバムといった形態は、表現の手法の1つとして必ず残るだろうと思う。いやこれは、残ってほしいという願望だろうか。僕はコンセプトアルバムが大好きだから。
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