最近仕事があまりにも…な感じなので、夜は若干音楽に逃避している。
今日は、僕のとても好きなバンドの一つ、スーパーカーを紹介しようと思う。
高校の終わり頃から邦楽ロックにハマった僕は、「ロキノン系」(ロッキンオンジャパンという音楽雑誌に載るようなバンド)といわれるジャンルを中心に、ミスチルやバンプといった王道路線から外れ、少しずついろんなバンドの音楽を聴くようになっていった。
※あくまで僕個人の感想だけど、ロキノン系というのは音楽にうるさい人たちから「邪道」と思われている気がする。クラシックほど硬派でもなく、ジャズほど渋くもなく、洋楽ロックほどかっこよくもない。だけど僕を含めロキノン系が好きな人は、日本語で書かれた歌詞の世界や、派手な超絶技巧よりも全体のアンサンブルといったロキノン系の雰囲気が好きなのだと思う(インストバンドやめっちゃプレイの上手いバンドだってもちろん存在してますが、あくまで傾向として)。
※邦楽ロックとロキノン系の包含関係ははっきりしないけど、少なくとも邦楽ロックって言えばロッキンオンジャパンに載らない日本のロックバンド全部を含むので、集合としては邦楽ロックの方が大きい。
そういったややマイナージャンルといった感のあるロキノン系だけど、その良い意味でのぼんやりとした感じが、なんとなく僕の性に合っていた。同時期にビートルズ、オアシス、レッチリなどなど、洋楽好きな友人から「手始めに」教えてもらったビッグネームも聴いていったけど、僕が大学の行き帰りにいつも聴いていたのは、邦楽ロックだった。
僕は1年生の頃京阪電車を使って京大まで通っていた。京橋から出町柳に至る1時間弱の間、音楽を聴きながら、春は山々に咲いた桜を遠く眺めたり、梅雨の時期には窓を伝う水滴に霞む曇り空をぼんやり見ていたりするのがとても好きだった。
スーパーカーで最初に聴いたのは、1stアルバムの"スリーアウトチェンジ"だった。
アルバム名を口にしただけで胸がキュンとしてしまうと言ったらちょっと異常かもしれないけど、1曲目の'cream soda'が流れてきた時の衝撃は、今でもよく覚えている。
シューゲイザーっぽい(意味不明だったらこの単語は忘れるかググるかしてください)歪んだギターのソロに始まり、混然一体となった演奏の中にきちんとベースやドラムの音が聴こえていて、つぶやくように歌うボーカルの歌詞がまた切なくて…。使ってるコードはシンプルで、Cメロの部分を除けばたぶん4つか5つだと思う。
この曲を筆頭に、"スリーアウトチェンジ"というアルバムはとにかく素晴らしい作品だ(語弊があって、アルバム全部素晴らしいんだけど、これは特に)。青春ドラマを見てるみたいな切なくて青い音楽がずっと流れてきて、それもはっきりした映像じゃなくもやがかかったような、そんな感覚。これはたぶん石渡淳治の詞が大きく影響している。あえてミスチルと比べるなら、ミスチルの歌詞は情景描写や心理描写がかなりはっきりしているんだけど、スーパーカーはもっとぼやかしている感じで、だがそれがいい。
誰しも青春時代の記憶なんて曖昧で、曖昧だからこそ妄想の余地がある。
さして遠い過去でもない高校時代なぞを、このアルバムを聴きながら繰り返し繰り返し思い出していたように思う。
"スリーアウトチェンジ"は基本的にシューゲイザーのテイストの混じったバンドサウンドが特徴的なアルバムだけど、後半になるにつれちょっと異色な曲が入ってくる。
まずはシングルでもある'PLANET'。スーパーカーの曲にしては珍しく、バイオリンか何かの弦楽器が使われている。弦楽器の柔らかい音とバンドの音が相まって、ごりごり直球で押してくる感じではなく、天国にでもいるみたいなのんびりした感じに仕上がっている。
それからアルバム最後の曲'TRIP SKY'。音の感じはいかにもこのアルバムらしい澄み切ったアコギの音と轟音エレキギターの音を中心に組み立てられている。この12分を超える長い曲の本領が発揮されるのは後半。透明な世界に身をゆだねていると、いつしか本来のリズムと演奏される楽器の音にずれが生じ始めていることに気付く。どことなく狂気じみた流れの中で、それでも曲は続いていく。そして最後に、唐突に世界は終わる。
"スリーアウトチェンジ"という名前が示すように、このアルバムを聴き終えた後に待っているのは「とりあえず終わったんだ」というなんともいえない感じ。それは後悔とかあとくされとかではない。
チェンジということは、ゲームセットではない。まだまだこれから試合は続いていくけれども、ひとまずこのイニングは耐えしのいだ、あるいは精いっぱいがんばったけど攻撃が終了した、そんな淡々としたワンシーンを描いているのだと思う(もちろん野球の試合を歌ったアルバムではないよ。念のため)。
それが'TRIP SKY'という曲によって見事に際立っているように思う。
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