今日は、1)広告業界を志望する人におススメの本3冊、2)本で得た知識を使う時に気を付けなければならないこと、の2つのことについて書く。
1)広告業界を志望する人におススメの本3冊
僕は特に広告系の学生団体やセミナーに参加していたわけでもないし、学部も理学部の生物科学系というところに所属していて、就職活動をする以前、広告業界のことはまったくと言っていいほど知らなかった。
そんな人間でも、この本さえ読んでおけば、広告業界についての基本的な知識は得られるよ、という良書を挙げておく。
明日の広告 変化した消費者とコミュニケーションする方法 (アスキー新書 045)
- 作者: 佐藤尚之
- 出版社/メーカー: アスキー
- 発売日: 2008/01/10
- メディア: 新書
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言わずとしれた、広告業界についての入門書。とにかく、わかりやすい。広告業界に多いカタカナや英語の専門用語がきちんと解説されている。スラムダンクの事例は非常に具体的で、「消費者と付き合う方法」を考えるという広告会社の仕事が、未経験者にも目に浮かぶ。そして、Twitterという言葉こそ現れていないものの、「ネオ茶の間」という言葉でテレビとインターネットがつながりあう今のメディアの風景を予言している点が素晴らしい。広告業界のことをまったく知らない人が、1冊目に手に取る本として超おススメである。
- 作者: 高広伯彦
- 出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ
- 発売日: 2012/03/30
- メディア: 単行本
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「明日の広告」がわかりやすく為になるマンガだとしたら、こちらはさまざまな分野の知識を横断して書かれた教養書である。僕などはまず何よりも読み物としておもしろい!と思った。広告代理店には今コミュニケーションプランナーという肩書きを持つ人が増えてきており、学生の側にも「コミュニケーションプランニングがやりたい!」という人が増えてきているが、それがいったいどういうものなのか、多様な視点から解説する。理系や文系という垣根をとっぱらい、あらゆることに興味を持つ、好奇心旺盛な人にはドンピシャの書だ。
- 作者: 田端信太郎
- 出版社/メーカー: 宣伝会議
- 発売日: 2012/11/12
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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上記2冊が、広告コミュニケーションという観点で語っているのに対して、こちらはメディアの本。広告業界を志望するなら、自らが扱うことになるメディアの知識は必要不可欠である。著者のアツい想いが随所に現れ、メディア業界が今直面しているピンチは逆にチャンスでもあるんだ、と勇気をもらえる本。メディアの自己予言達成能力、あらゆるメディアを分類する三次元のマトリクスなど、メディアについての本質的な知識が身につくだろう。著者は理系のバックグラウンドも持っており、広告における数字やロジックの重要性も実感できるだろう。
雰囲気で言うなら、「明日の広告」はポップ、「次世代コミュニケーションプランニング」はクール、「MEDIA MAKERS」はホットな感じかな。
2)本で得た知識を使う時に気を付けなければならないこと
だいたい、僕のような理屈っぽい学生にありがちなのが、本を読んだだけで面接に臨み、表面的な知識を得意げに披露して落ちる、というものだ。
広告会社の社員であれば、上記の本を読んでいる可能性は非常に高いし、仮に読んでいなかったとしても、その内容は日々の業務の中で感じているものである。
相手が知っていることを語ってどうする?まったく無意味だ。
そりゃ、「学生にしては勉強しているね」という評価はもらえるかもしれないが、そんなものは業界知識は皆無だけどめちゃくちゃキャッチーなヤツ(起業したとか世界10周したとか合コン1000回主催したとかね)に比べたらゼロに等しい得点である。
広告業界に入るための本、という検索ワードで調べてくれているくらいだから、あなたは僕とかなり思考回路が似ていると思う。つまり、一言でいえば、理屈の大切さを信じている。
目指すべきは、上に書いたような超キャッチーな人間ではない。本や他人から得た客観的な視点を失わず、しかし自分の意見をきちんと述べることのできる、バランスの取れた人間である。
そうアピールしたいのであれば、本で得た知識を、著者のことばではなく、自分のことばで語らねばならない。
自分のことばで語れるようになるには、どうすればよいのだろうか?
答えは、著者以外のプロ(つまり、広告会社の社員)に聞く。そして、自分の経験と照らし合わせる。この2つだ。
本を読んだという点の経験を、同じ業界の社員というヨコの方向に広げ、さらに自分の経験、歴史というタテの方向に広げる、と言い換えてもいいだろう。
まず、ヨコに広げることについて。
同じことを述べるにしても、人間にはことばのバリエーションがある。本で語られていたことを、現場の社員に聞いてみれば、別の言い方で言ってくれることもある。あるいは、本の内容が部分的にせよ間違いだったとわかることもある。
その中で、自分が一番しっくりくる表現を、集めてゆく。
面接で、「○○という本にはこう書かれていました。それを御社の××さんに確かめたところ、〜とおっしゃっていました」と言うことができれば、説得力は段違いだ。
それでもまだ、「自分のことば」で語れるようにはなっていない。なぜなら、本を読んでOB訪問で本の内容を確認する、ということは、あなた以外の学生にもできることだからだ。
タテに広げよう。
本で得た知識や、OB訪問で得た知識を、自分の経験に結び付けるのである。
僕は日本とインドそれぞれの若者とじっくり話す機会がたくさんあった。その中で感じたのは、「日本ではこう生きれば幸せになれるという共通の正解はない。一方インドではお金を稼げば幸せになれるという共通の価値観がある」ということである。
これは、日本では「みんなが同じものを求める時代は終わった」ということだ。みんなが同じテレビ番組を見て、同じように年収に応じたクルマを買って、同じタイミングで結婚して…という時代は、終わったのだ。
それは、広告会社が長年マスメディアを通じて取り組んできた「世間の共通の価値観の醸成」を否定するものだ。だから今、広告会社は苦しんでいる。
自分は、そんな日本で、それぞれの人がそれぞれの幸せを感じるための応援がしたい。
そんなことを、面接では語っていた。
点を線に、面にしてゆく。
説得力は、長さが面積になるように、掛け算で増大してゆく。
本というのは、読めば終わりというゴールではなく、思考と行動の出発点にすぎない。
本をたくさん読んでいるというだけでは、少なくとも面接という場所では、何の武器にもならないということを、心に刻んでほしい。
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