Rail or Fly

レールに乗るのか、飛び降りるのか、迷っているきみに届けたい。

クソマジメな人の戦い方について。

 僕はよく人から「マジメだなぁ」と言われる。

 

その意味するところは、自分でもよくわかっている。

 

どんな物事に対しても、一生懸命仮説を立て、分析し、理由付けしてしまう。

 

あまり手を抜いたりサボったりできず、自分のせいでチームが失敗したりすると非常に落ち込む。

 

人に対しては決して自分勝手に振る舞わず、ややもすると相手ばかり立てて、自分は気疲れしてしまう。

 

アドリブに弱く、会話の流れの中で気のきいたことを言ったり、突発的な事故に素早く反応するのが苦手だ。「これを言っても絶対につまらないだろう」といった想像を咄嗟にしてしまうため、会話に微妙な間ができてしまい、結果としてテンポが狂う。

 

飲み会の出し物を考える時も、どうしても枠にとらわれた発想しかできない。

 

そもそも、こんな文章を書いているのが、マジメである何よりの証拠なのだが…。

 

 

 

僕は昔から、「マジメだなぁ」と言われるのが嫌だった。

 

それは、大阪という場所で生まれ育ったこともあったと思う。よしもとは普通に好きだったのだけど。

 

特に、高校の頃は辛かった。

 

今となっては自分が自意識過剰なだけだったのだろうが、当時の僕は、教室で交わすあらゆる会話に、相手を笑わせる何らかのネタを仕込んでおかなければならないという強迫観念を感じていた。

 

そして、僕はどうしてもそういった会話がうまくできなかった。

 

部活がなければ、僕は学校に行っていなかったかもしれない。それくらい、高校生の頃の僕にとって、自分が「マジメ」であることは消し去りたい己の属性だった。

 

 

 

日本語において、「マジメだ」という言葉は決して褒め言葉ではない。

 

それは、「正直だ」という言葉に似ている。

 

正直の上にバカをつけたバカ正直というけなし言葉があるように、クソマジメという言葉がある。

 

おもしろいことの一つも言えず、愚かしいほどにマジメに、目の前のことに向き合ってしまう。それが、クソマジメ。

 

僕も本当は、サークルの飲み会でバカ騒ぎして記憶喪失して帰ったりしたかった。バカ騒ぎするために、下ネタを無理やり言って周りに合わせるしかなかった。

 

飲み会なんて、各自が楽しくやればいいのに、そこで気を遣って周りを盛り上げようとしてしまう自分が、本当に嫌だった。

 

 

 

同じような人は、きっといると思う。

 

「マジメだなぁ」と、半ばからかい口調で言われ、なんとかして「マジメでない」人間になろうと苦労している人が。

 

でも、薄々気付いていると思うけど、僕たちは絶対に真のおちゃらけ人間にはなれない。

 

じゃあどうするか。

 

 

 

僕は、マジメでいいと思うのだ。それこそ、頭にクソのついたクソマジメでいい。

 

苦手なところを埋めようとしたって、せいぜい平均点が関の山だ。そうではなく、自分の偏ったところをさらに突き詰めていくのだ。

 

人を笑わせることが得意でないなら、別の得意な対人コミュニケーションのやり方を編み出せばいい。

 

人のことを気にしすぎてしまうマジメな人は、1対1のコミュニケーションで相手のことを理解する力が優れているはずだ。相手の話を聴いて、そこに自分の個人的な経験を絡め、さらに相手の深いところの体験を聴きだしていく。それで深いところまで仲良くなれる人が、必ずいる。

 

アドリブが得意でないなら、事前の調査を徹底的にやる。就活の面接でどうしても硬くなってしまってトークの上手い人間に負けてしまうなら、自分はどんな人間で、その会社がどんな会社なのかを面接の前に考えて考えて考え尽くす。それで、絶対に通る。

 

広告代理店なんて「らしくない」と、僕は昔からの友人に言われたことがある。昔だったら、「そんなことないよ。俺だって騒ぐの好きなんだぜ!」的な返しをしていただろう(そしてそもそも選考に通っていないだろう)。でも僕は、「そうだね」と素直に言った。

 

それが、人から見た自分の見え方だから。それでいいじゃん、と。

 

 

 

どんなに頭が柔らかくてトークが上手いヤツが相手でも、僕は僕なりに勝負する。

 

彼らと一緒に何かやるなら、自分のできること、得意な部分を担当する。いくらつまらないと言われようと、論理を詰めたり、分析したりするのは、クリエイティブな部分に負けず劣らず重要だ。

 

かっこつけてるわけでもなんでもなく、既にこの性格が与えられてしまったのだから、それでやるしかないのだ。

 

クソマジメには、クソマジメなりの戦い方がある。

 

自分がクソマジメであることを認めてしまえ。そして、戦うんだ。