毎日会社で人と話をしていると、「お前は将来何がやりたいの?」的な話になることがある。
特に新卒の場合、「なんでこの業界・会社に来たの?」という質問は挨拶代わりのようなものだし、そこから将来やりたいことの話につながるのも、ごく自然なことだ。
僕のやりたいことは、ここ最近変わっていない。バーをやりたい。今の日本に必要だと思うから。 で書いた通り、対話のできるバーをつくりたい、というものだ。
シェアハウスに友人同士を呼んで会わせたりするのも、こうして毎日ブログを書いているのも、さし飲みが大好きだと公言しいろんな人と飲ませてもらっているのも、そして今広告代理店でメディアの部署にいるのも、すべて「対話のできるバーをつくる」という未来に向かうためのものだ。
忙しい毎日の中でも、自分のやりたいことを忘れず心の中に抱き続けて、人にもそれを話すことができる、というのはかなり幸福なことだ。
それもすべて、有り余る時間の中、たった一人でずっと悩み続けていたあの時代があったからだ。
就職活動をやめ、海外インターンをすることにして休学届けを出したものの、インドの陰謀に巻き込まれてビザが取れず、出国が半年も延びてしまったあの時期。
それから、8人ものインド人たちに囲まれ、たった一人の日本人としてスラムのど真ん中で生活していたあの11ヵ月。
周りの友人たちは既に会社で働きはじめ、忙しくも充実した日々を送っている。
僕はといえば、毎日クライアントである日系企業の駐在員の方々の豪華なマンションと自分のボロアパートとの差を目の当たりにし、「俺は何のために働いているんだろう」と自問し続けていた。冬には冷水しか出ないシャワーを震えながら頭からかぶり、夏には埃っぽい道を汗だくになって駆けずり回りリキシャをつかまえていた。
日曜日にまとめサイトやニコニコ動画を見ていると、遠い日本を思って時々涙がこぼれた。
そして相変わらず、「将来やりたいことが見つからない」という悩みは、大学に入る前からずっと変わらず、僕の胸を締めつけ続けていた。
それでもお腹は減るし、朝はやってくる。月3万円の給料がなければ、スラムのアパートも追い出されてしまう。感傷にずっと浸っている暇などない。生きるために、がむしゃらに働いていた。
誰かと自分とを比べて落ち込み、やりたいことが、将来が全然見えなくて悩み苦しんでいたあの地獄のような時代があったからこそ、僕は胸を張って、今やりたいことを人に語ることができる。
味わった地獄が深ければ深いほど、それが後から君にもたらす力は計り知れないものになる。
「将来やりたいこと」というのは、「今どうしてもできずに苦しんでいること」の裏返しなのだ。
「昔、勉強がどうしてもできなかった」人は、同じような苦しみを抱える人と一緒に勉強する先生になればいい。
「人間関係がどうしてもうまくいかない」人は、その悩みを率直にインターネットで表現すればいい。必ず、共感してくれる人がいる。
君ができないということ、君は取りたてて優れてはいないという事実、それこそが、「同じような人たちの気持ちが心の底からわかる」という君の最強の武器をもたらしてくれるのだ。
今、辛くて目の前が真っ暗な時代のまっただ中にいる人たちへ。
今直面している地獄は、後になって、必ず君の礎になってくれる。「あの時代があってよかったな」って言える日が、必ず来る。
どう礎になってくれるかは、僕にはわからないし、今の君にもわからない。
それでも、「いつか必ずこの苦しみがプラスの力に変わる」と信じて、次の電柱まで、また次の電柱までって、マラソンを続けていってほしいのだ。